パープルバス釣り発明所ブログ

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死のう」



彼はもうダメだ。涙の枯れ果てたその眼（まなこ）は、腫れを手に入れた
代わりに生気を失い、１センチほどしか開かなくなったクチビルからは、
死への渇望（かつぼう）しか紡がれる事はなかった。



タマ姉のポスターが・・・破れた・・



彼は世界を遮断した。圧倒的に。確実に。
彼が破ったのはポスターなどではなく、自分の心臓だったのだ。



彼ぐらいの年の人なら、一度は大切な誰かを傷つけたことがあるだろう、
家族、友人、恋人・・。傷つけてもなお、手に届く範囲にいてくれる
ということは、なんと幸せな事なんだろうか。




↑麗しで、憧れで、生きがいだった向坂　環（こうさか　たまき）さま。
通称、タマ姉（タマねえ）。
ちょうど真ん中ぐらいをドアを開けるときに引っかいてしまった・・。





「あぁっ！？ナニ見てんだテメェ？」
彼は急に壁の存在がカンに障ったらしく、烈火のごとく激怒！
壁相手に本気でケンカを始めた。もう、彼には見えてはいけないものが見えている。


今までの人生で培った、全ての暴力と罵声を壁に向かって浴びせた。
彼が壁に投影していたのは、他ならぬ愚かな自分、そのものだった。



「なんでだ！なんでだ！！」



ひとしきり、壁や柱を殴りつけた彼は急に泣き出した。
タマ姉を失ったこと、怒りに任せて壁を破壊した自分の幼さと恥ずかしさ、
言葉がまるで形でもあるかのようにノドに詰まり、呼吸をさせてもらえない。



そして彼は決心した。

「釣りに行こう・・できるだけ遠く、できるだけ深い所に・・・・」

そこで自分自身を終わらせることを・・・。




↑暴れている途中に、強者の匂いを嗅ぎつけたのであろう、蟷螂拳（とうろうけん）
　の使い手が彼を見上げていた。消えてろ、今の彼はたとえ君とでも互角に戦うぞ。







・・・・・・。



彼は自分が道を知っている一番遠いダムへと到着した。車の上にはまだ
ペチャンコのフローターが乗っている。彼の死へのプログラムはこうだった。




『ダムの一番沖で怪魚をかける⇒怪魚にもぐられてフローターごと水没
⇒彼は、エキストラファースト死ン王（シンキング）⇒死』



いけないルナ先生ばりのありえない死への妄想。しかしこの時の
彼に現実を見る力などあるはずもなく、フローターに乗った彼は沖で
メタルジグ（メタルワサビー）をシャクリ始めた。




しかし、彼はメタルジグをシャクって釣ったことがなくノーバイト。
他のルアーもさんざん使ったが真っ暗になるまで、まったく魚のアタリはなかった。




「タマ姉、なんで連れてってくれねぇんだよタマ姉・・・。
貴女がいない世界で生きていたって・・・」



あきらめきれない彼はフローターが乾くまでの間、おかっぱりを決意。
ポッパーをノンストップで首フリさせ続けた。



カポカポカポカポカポカポカタパン！
喰い損ね！その場でチョンチョン　ダポン！！
ノッた！岸釣りには少し短い５フィートのフローターロッドがひん曲がる！



やっとこれで・・・タマ姉のところに・・行けない。コイツはきっと最近
よく釣ってるアイツだ。なんでだよタマ姉・・。俺にまだこの地獄で生きろって
言っているのか？教えてくれよタマ姉・・・。



↑使用ポッパー・エクスキャリバーのポップンイメージＪｒ。
重さもあり首フリもドボンって音も出せる好きなポッパー。





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